神秘の世界にも現代化の波?ルーマニアの魔女、インターネットを通じ“儀式”行うとして注目
呪術や魔術といえば、非現代的なイメージをお持ちの方が多いのではないだろうか。
しかしそんな現代社会とかけ離れた世界に生きるルーマニアの魔女たちが、魔術を行う際にインターネットを使用しているとして注目されている。
ビデオ通話で行われる“愛の呪文”
「私の後に続きなさい!私が望む者と共にありなさい」
そう唱えるのは、ルーマニアの首都ブカレストから北に向かって15キロほどの土地に暮らす魔女の一族だ。
この呪文は“愛の呪文”と呼ばれるもので、インドにいる顧客のためビデオ通話を通して行われたという。
「本当に力のある魔女は、離れた場所からでも問題を解決することが出来るんです」
こう説明するのは弱冠20歳の魔女、Cassandra Buzeaさんだ。
ルーマニアの魔女のコミュニティにおいては、近年Facebookなどのウェブサイトを通じた“儀式”が行われるようになってきているという。
「携帯電話やFacebookが魔法を行っているわけではありません。(魔法を行っているのは)私たちが唱える言葉であり、私たちが行っている儀式であり、お互いの目を見つめ合えば儀式が作用するには十分なんです」
魔術によって彼らがどれほどの利益を出しているのかは明らかにされていないが、タロット占術の値段は50ユーロ(約6200円)からとのこと。
愛や健康、金銭に関わる特別な儀式においては数週間にわたり行われることもあり、数百ユーロ(数万円ほど)の費用がかかることも珍しくないという。
若い世代の魔女がインターネット利用を推める
東欧における魔女の歴史は古く、魔術は民族風習として行われてきた。
現在でも東欧には4000人ほどの魔女が存在しているとされ、彼らは欧州からアジア圏、さらには米国といった世界各国に顧客を持つという。
そんな古き時代から続く神秘の世界にインターネットを持ち込んだのは、やはり若い世代の魔女たちだ。
Buzeaさんによると、若い魔女らが上の世代の魔女らに対し“自撮り”の持つ影響力について説き、そこからインターネットが徐々に広まっていくことになったという。
「魔術は同じで何も変わってはいませんが、他国の顧客と連絡を取ることに関しては、今は非常にやりやすくなりました」
こう話すのはBuzeaさんの母親に当たり、家族に伝わる魔術を彼女へと教えたMihaela Mincaさん。
今ではMincaさんもインターネットを利用しているという。
インターネットの利用から政治活動まで
一方、インターネットの利用が魔女のコミュニティにもたらした変化は、これだけには留まらない。
昨今、ルーマニアの魔女の間においては政治への関心が高まっており、汚職に対する抗議活動に参加している者もいるという。
そんな中の1人であるMincaさんは、インターネット上で欧州から米国に住む9人もの魔女・魔法使いらとつながっており、ルーマニアの政治家らに呪いをかけることを画策しているのだそうだ。
ルーマニアは欧州連合(EU)参加国の中で最も汚職が進んでいる国家の1つとされ、2007年のEU参加以来、同国の司法制度は欧州委員会の監視下に置かれている。
他方で今月23日から26日にかけては、EU加盟27カ国において欧州議会議員選挙が行われる。
Mincaさんは、それに合わせ呪いの儀式を行っていくという。
「私たちはルーマニア政府に対し強力な儀式を行い、国家の利益のため選挙が開催される26日に魔術をかけます」
インターネットを駆使し、顧客獲得から政治的運動まで行う現代の魔女たち。謎に包まれた存在である魔女がインターネットを使用しているなんて、少しだけ親近感が湧くような気がする。(了)
出典:Reuters:Romania’s witches harness the powers of the web(5/1)