米軍によるイラン核施設の攻撃は失敗か?周辺への放射能漏れは確認されず

6月21日、アメリカ軍がイランにある3カ所の核施設を攻撃したが、施設への被害がそれほど大きくなかったとの見方が出ている。
放射線レベルに上昇は見られず
アメリカ軍は22日、複数の「B-2」ステルス爆撃機などにより、イランのフォルドゥやナタンズ、イスファハンにある核施設を攻撃。トランプ大統領は、証拠もみせず、これらのウラン濃縮施設が「完全に壊滅した」と主張した。
しかし国際原子力機関(IAEA)は、アメリカ軍の攻撃を受けた3カ所の核施設の敷地外で、放射線レベルに現在のところ上昇は見られないと発表した。
またサウジアラビアの原子力規制庁(NRA)も、湾岸諸国で放射能の影響は検出されていないと述べている。
さらに国際原子力機関(IAEA)は、イスファハンの攻撃対象となった建物には、核物質が含まれていないか、低レベルの濃縮ウランだけが含まれていたとし、次のように述べた。
「本日(21日)に攻撃を受けた施設には核物質が含まれていないか、少量の天然ウランまたは低濃縮ウランが含まれていたため、放射能汚染は損傷を受けた建物、あるいは破壊された建物に限定される」
核施設から濃縮ウランを移送か?
イランのIRNA通信は、フォルドゥの核施設があるQom州の危機管理本部の発言を引用し、「Qomとその周辺地域の住民への危険はない」と報じている。
またイラン国営放送局のHassan Abedini副政治部長は、「濃縮ウランは核施設から移送されており、攻撃された場合に、放射線を発生させ、我が国の国民に危害を及ぼすような物質は残っていない」と主張。
イラン政府の高官も、フォルドゥの核施設は回復不能な被害は受けておらず、地下施設の職員数も最小限に削減されていたとし、イラン赤新月社も、アメリカの核施設への攻撃で死者は出なかったと報告している。
イラン原子力庁(AEOI)も、フォルドゥ、イスファハン、ナタンズの3施設への攻撃があったことを確認したが、核開発計画は停止しないと強調した。
イランの最高指導者・ハメネイ師の顧問であるAli Shamkhani氏は6月22日、アメリカ軍による主要な核施設への攻撃にもかかわらず、イランは依然として濃縮ウランを備蓄していると述べたという。
アメリカの国防総省も、イランの核施設の評価は、まだ行われている最中だと述べている。
米軍基地への攻撃を示唆
イランのペゼシュキアン大統領は、アメリカ軍による核施設への攻撃に対して、「対応策」を講じる必要があると述べたという。
イラン革命防衛隊(IRGC)も、イスラエルへの攻撃は継続すると表明し、アメリカ軍の空爆に対抗すると明らかにした。
またIRGCは、アメリカが自らを「侵略の最前線」に置いたとし、中東の米軍基地は「脆弱」だとも述べたそうだ。
イラン軍は6月22日、イスラエルに向けて、ミサイル攻撃を実施。イスラエルのテルアビブやカルメル、ハイファを含む約10か所が、攻撃を受けたそうだ。
イスラエル側も22日には、約30機の戦闘機を使い、イラン中部の都市、ヤズドにある長距離ミサイル基地を含む「数十」の標的を攻撃したと発表した。(了)
出典元:The Guardian:Israel-Iran war live: Iran parliament votes to shut Hormuz strait in response to US attack raising fears of oil price shock(6/22)