スイスの小さな村がベーシックインカム導入のためクラウドファンドを開始、注目集まる
スイスの小さな村で、試験的にベーシックインカムを導入するためのクラウドファンディングが開始されることが決定し、注目を集めている。
実施されれば最大月額29万が支給
ベーシックインカム導入のための動きを進め、注目を浴びているのは、スイス北部のドイツとの国境沿いに位置する小さな村ライナウだ。
ライナウではこれまでベーシックインカムを試験的に導入し、一人につき最大で2500フラン(約29万円)を普及する計画を立ててきた。
またその実施のため、同村では住民に対し試験への参加の有無を問う投票を実施。
その結果今月10日、村の1300人もの住民の半数以上に当たる692人が参加の意思を表明。
これにより、村の議会はベーシックインカムを試験的に導入するための動きを継続させることを、正式に決定することとなった。
今後は試験に参加する人々に対し給付するための資金を確保するため、クラウドファンディングを実施するとされている。
.#Swiss Village Agrees To Support 2,500 Francs Per Month #UniversalBasicIncome Programhttps://t.co/ZATqKqj1fm#Rheinau #Switzerland #UBI #Europe #Kenya #Finland #Canada #Documentary pic.twitter.com/8nGgfiXI18
— World News Network (@worldnewsdotcom) September 11, 2018
そもそもベーシックインカムとは?
しかし、そもそもベーシックインカムとはどのような制度なのだろうか。
ベーシックインカムとは政府によって支給されるお金で、最低限の生活を営むために必要とされる収入を保障するため無条件で給付されるもの、と定義されている。
無条件で普及されるものであるため、給付のために特別な条件等が必要とされないのもベーシックインカムの特徴だ。
一方、近年ベーシックインカムがにわかに注目を集め始めている背景としては、人工知能などの発達により、将来的に人の手による労働が削減されていく方向に向かっていくためだ。
人の手によって行われていた労働が機械に置き換わることで職を失う人が増える中、そのような人々の収入をいかにして保障するかという観点でベーシックインカムには注目が集まっている。
導入されれば実際にいくら給付される?
それではこの試験が実際に開始されれば、参加者はどれほどの額を受け取ることができるのだろうか。
今回の試験においては給付額は年齢によって異なり、例えば18歳以下の場合には月625フラン(約7万2000円)の額を受け取ることができる一方、25歳以上の参加者は月2500フラン(約29万円)を受け取ることができるという。
しかし試験に参加している際に給料や年金など何等かの収入が入った場合には、給付額を上回る額は返金しなくてはならないようだ。
Swiss village #crowdfunds to support #basicincome experiment
More than 100 villages expressed interest, but #Rheinau was choose because it’s a “kind of mini-#Switzerland, with a well-mixed population” to test the idea: https://t.co/qJo4LmAtha pic.twitter.com/leKkmM1kdG— Giovanny Leon (@GiovannyLeon) September 11, 2018
小さな村で試験が実施される理由とは?
しかしなぜ人口規模1000人程度の小さな村において、このような試験的試みが行われることとなったのだろうか。
この試験の背後には、スイスで映画監督として知られるレベッカ・パニアン(Rebecca Panian)氏の存在がある。
スイスでは2年前に、国全体でベーシックインカムを導入するか否かを問う国民投票を実施。
結果としてこの住民投票では反対が多数を占め、国としてベーシックインカムを導入する案は見送られることとなったが、この投票の結果にパニアン氏は思うところがあったようだ。
パニアン氏はこれについて、「世界における社会と経済の変化を考慮すると、ナンセンスといってはねつける前に、新たな未来のため少なくとも試験を実施することは賢明なことだ」とコメント。
ベーシックインカムを試験的に導入し、またその様子をドキュメンタリーとして記録するため、ライナウを選んだとしている。
一方パニアン氏によると、この構想に対してはスイスにおける100以上もの村が関心を表明したという。
しかしその中でライナウを選択した理由としては、ライナウの人口構成が“スイスの縮図”のようであったためである、としている。
近年欧州ではフィンランドにおいてもベーシックインカムの試験的な導入が行われてきたが、これは試験の延長が行われないことが決定するに至っている。
必要最低限の収入を働かずして得られるというのは理想的な制度にも感じられるが、給付のための資金をどのように確保するかなど課題は山積みだ。
今回のスイスの試みがどのような結果を迎えるのか、これからが気になるところだ。(了)
出典:Telegraph.co.uk:Swiss village crowdfunds to support £2,000 basic income experiment (9/10)
出典:Bloomberg:Swiss Village Votes for Free Money. Now It Just Needs the Cash(9/10)
出典:BUSINESS INSIDER JAPAN:ベーシックインカムとは何か? なぜ、いま議論が盛り上がっているのか?(2017/5/18)