故人の声で話す「アレクサ」について、専門家はどう見ているのか?
アマゾンは現在、AIアシスタント「アレクサ」が亡くなった家族の声で話せるよう、取り組みを進めているが、専門家はどう見ているのだろうか?
「悲しみが癒される可能性がある」
アマゾンは6月22日、「アレクサ」がどんな声でも、たとえ亡くなった家族の声でも真似できるようにするためのアップデートを行っていると発表した。
このことに関して、オーストラリア心理学会の会長であるタマラ・カヴェネット氏は、ABCに対して、次のように答えている。
「研究では、愛する人を失った後の複雑な悲しみを経験している人々にとって、喪失に関連する辛い記憶を追体験して処理することが役に立つことが示されました。したがって、亡くなった家族や友人のシミュレーションと対話することで、悲しみが癒される可能性があります。とはいえ、いつまでもそうしていると、人が喪失と折り合いをつけて前に進むことを阻害する可能性もあります」
1分未満の音声からデータを収集できる
先週開かれた、アマゾンの年次会議では、子供が「アレクサ、おばあちゃんが私に『オズの魔法使い』を読んでくれるようにしてくれる?」と尋ねる映像が流されたという。
するとその子供の祖母を真似た声で、本が読み始められたそうだ。
アマゾンの上級副社長兼ヘッド・サイエンティストのロヒト・プラサード氏は、アップデートされたシステムは1分未満の音声から、十分な音声データを収集できるようになるとし、次のように述べた。
「AIはその喪失の痛みを取り除くことはできませんが、間違いなく彼らの記憶を持続させることができます」
自然のプロセスを改ざんする恐れ
一方、カヴェネット氏は、「この技術の魅力は明らかだが、自然のプロセスを改ざんし、悲しむ人の愛する人に対する記憶をゆがめたり、邪魔したりする可能性がある」とし、次のように警告している。
「人々は、現実世界の友情やつながりを犠牲にしてまで、この技術に携わるのを止めることが困難になるかもしれません。だから、この技術に利点があるかもしれないですが、それは非常に慎重にアプローチされるべきで、研究はまだそこに到達していないのです」(了)
出典元:ABC.net:AI can bring you the voice of dead loved ones. But is this a good thing?(6/26)