両足を切断した男性が、世界で初めてエベレスト登頂に成功
アフガニスタンで両足を失った退役軍人の男性が、エベレスト山頂に到達し、新たな歴史を刻んだ。
英で暮らす退役軍人の男性
その男性とは、イギリス・ケントの町、カンタベリーに住む退役軍人のハリ・ブダ・マガールさんだ。
彼は4月17日に登山を開始し、5月19日の午後3時にエベレスト山頂に到達。
両膝上を切断した人として、世界で最も高い山に登った最初の人物になったという。
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アフガニスタンで両足を失う
実は、ブダ・マガールさんは13年前、イギリス軍の「グルカ連隊」で伍長として勤務しており、アフガニスタンに派遣されていたという。
しかしアフガニスタンで、即席爆弾(IED)が爆発し、両足を切断。その後、アルコール依存症やうつ病と闘いながら、自分の人生は「完全に終わった」と感じたそうだ。ブダ・マガールさんは、次のように語っている。
「私は19歳までネパールで育ち、人里離れた村々で、障がい者がどのように扱われているかを見てきました。多くの人々はまだ、障がいは前世の罪であり、地球の重荷であると考えています。私自身もそう信じていました」
「かなり辛い時期で、ある時、自分の痛みや感情、あらゆるものをコントロールするために、お酒を飲み過ぎてしまい、何度か自殺を図ったこともありました」
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両足を切断した人の登山が禁止
その後、学校に通学していた時、エベレスト登山を思いつき、2018年に登る予定だったが、なかなか実現しなかったという。
というのも当時は、死亡する登山者の数を減らそうと、両足を切断した者や目の見えない人の登山が禁止されていたからだ。
そこでブダ・マガールさんは、禁止令を撤廃させる運動に協力。その結果、今回、義足を履いて、エベレスト登山に挑戦できるようになったという。
ただしやはり登山は困難を極めたらしく、ベースキャンプで天候が回復するのを18日間待ち、その間、ブダ・マガールさんと仲間は凍えるような状況に直面。2人の遺体が山から下ろされるのも目撃したそうだ。
しかし、元グルカ兵で、SAS山岳部隊のリーダーでもあるクリシュ・タパ氏が率いるネパール人登山家チームのサポートを受け、今回彼はエベレスト登頂に成功した。
ブダ・マガールさんは登頂に成功後、「足を失うことがなければ、エベレストに登ることもなかっただろう」とし、アフガニスタンで足を失った場所に戻り、「ありがとう」と言いたいと述べている。(了)
※グルカ兵とは、ネパール山岳民族で構成される戦闘集団のこと。
出典元:The Guardian:Double amputee Gurkha veteran reaches summit of Mount Everest(5/21)