宇宙に長期間滞在した場合、男性は勃起不全になる可能性
宇宙放射線と無重力状態が、どのように男性の性的健康に影響を及ぼすのかを探る、初めての研究が行われた。
勃起組織の機能を損なう
これまでも研究者たちは、無重力状態と宇宙放射線(星やその他の天体から放出される高エネルギー粒子、X線、ガンマ線など)が、人間の生理機能に及ぼす影響を調査してきたという。
それらの成果は国際宇宙ステーション(ISS)において、骨や筋肉の消耗を防ぐことなど、さまざまな予防策として導入されたが、宇宙滞在による勃起不全に及ぼす影響はまだ調査されていなかったという。
今回、NASAの資金提供を受けた研究者らは、マウスを使った実験を行い、太陽系外から飛来する放射線「銀河宇宙線」と、微小重力(影響力の程度は低い)が勃起組織の機能を損ない、数十年続く可能性があることを発見した。
マウスに模擬銀河宇宙線を照射
研究者たちは宇宙飛行が男性の生理機能に及ぼす影響を調査するため、マウスに着目。ニューヨークにあるNASAの宇宙放射線研究所で、数十匹のマウスをハーネスで 30 度の角度で吊り下げ、模擬銀河宇宙線を照射したという。
そして1年後のマウスの組織分析において、「銀河宇宙線」への曝露が少なくても、マウスの酸化ストレスが増加することが判明。さらに陰茎と勃起組織に血液を供給する、動脈の機能が損なわれていたそうだ。
研究者たちは、11月22日に発表された報告書において「総合するとこれらの結果は、長期にわたる深宇宙探査から地球に帰還した後、残りの期間を通じて、宇宙飛行士の性的健康、勃起組織の神経血管機能が損なわれる可能性があることを示唆している」と述べている。
しかし同時に、特定の抗酸化物質を使った治療により、「銀河宇宙線」にさらされた後の組織機能が改善する様子も見られたという。
現在、NASAや他の主要宇宙機関は、月への長期遠征や火星への航海の準備を進めているが、今回の研究者たちは、宇宙飛行士の性的健康を注意深く監視するよう求めたそうだ。(了)
出典元:The Guardian:Deep space astronauts may be prone to erectile dysfunction, study finds(11/22)