イスラエルの攻撃について、イラン反体制派の若者の反応とは?

6月13日、イスラエル軍はイランへの先制攻撃を行ったが、イランの人々はどう思っているのか?イギリスのBBCが、興味深い記事を公開している。
2022年には大規模な抗議デモを弾圧
イスラエルのネタニヤフ首相は、自国民にイランの核開発計画を阻止するために攻撃を行ったと説明し、同時にイラン国民に対しても「自由を獲得するための道も切り開いている」と呼びかけた。
そもそもイラン国内には、公式の野党グループは存在せず、当局は長年にわたり反対意見を弾圧しており、1980年代には大量処刑や投獄が相次いだという。
また2022年には、22歳の女性、マーシャ・アミニさんが、スカーフ着用義務違反の疑いで逮捕され、警察の拘束下で死亡し、その後大規模な抗議デモが各地で起きた。
しかしイランの警察は徹底的に抗議活動を弾圧。ノルウェーに拠点を置くイラン人権団体によれば、この弾圧で治安部隊により、537人のデモ参加者が殺害されたという。
イスラエルの攻撃を支持する人も
イスラエルのネタニヤフ首相は攻撃を行った6月13日、イラン国民に対し「立ち上がり、声を上げよう」と訴えた。BBCは、イラン国内にいる反体制派の若者たちの意見を聞いたという。(彼らの安全を守るため、全ての名前は仮名となっている)
イラン政府に批判的なイラン人のタラさん(26歳)は、BBCに対し、「愛国心、団結、敵に立ち向かうなどと口にするのは馬鹿げています。敵(イラン政府)は何十年も私たちをゆっくりと殺してきたのです。敵はイスラム共和国(イラン)なのです」と訴えた。
同じくイラン政府に批判的なシマさん(27)は、次のように述べている。
「イスラエルにはできるだけ早く、この仕事を終わらせてほしい。もう疲れ果てている。イスラエルやその行動にはまだ賛成できないけれど、始めたことは最後までやり遂げてほしい。私は彼らに、IRGC(イスラム革命防衛隊)、ハメネイ師、そして彼らの仲間たちの脅威を、私たちと世界から取り除いてほしいのです」
23歳のアミールさんは、イスラエルの攻撃を「100%」支持するとし、死亡したアミニさんのための抗議活動が弾圧されたことを指摘し、次のように述べた。
「彼ら(イランの警察)は路上で私たちを殺した。私たちの人生を破壊してきた人々がついに恐怖を味わう時、私は喜びを感じます。私たちはそれだけの報いを受けるに値する」
ネタニヤフ首相の意図を疑う人も
一方、イラン政府に反対しながらも、イスラエルのネタニヤフ首相の意図を疑う者もいるという。
アミニさんの抗議デモに参加し、一時逮捕された活動家のナビッドさん(25)は、次のように述べている。
「抗議デモに参加したのは、当時は体制転換に期待していたからだ。この紛争で、イラン自身が破壊されることなく、政権が転覆するとは到底思えない。イスラエルは一般市民も殺している。いずれ人々はイスラム共和国(イラン政権)の側に立つようになるだろう」
また26歳のダリヤさんは、「ネタニヤフ首相は(略)、イラン人の自由獲得を支援していると主張しながら、住宅地を標的にしているのです。国を再建するだけでも何年もかかるでしょう」と主張した。
22歳のアレズーさんは、複雑な心境を次のように語った。
「(イランの)政権が憎い。そして、政権が私たちにしてきたことも憎い。でも、爆弾が落ちるのを見ると、祖母や幼い従妹のことを思い出します。ネタニヤフ首相がガザでやったことを見てきました。本当に彼はイラン人のことを気にかけているのでしょうか?(略)二つの悪のどちらかを選ばなければならないような気がして、選べないんです。ただ国民の安全を願っています」
27歳のミナさんも、「何よりもイランの政権が消えてほしい」としながらも、次のように述べている。
「イスラエルは私たちの救世主ではありません。罪のない人々が死ぬことは、自由への一歩ではなく、別の形の不正です。私は、ある種のテロを別のテロに置き換えたくはありません。私はこの(イランの)政権に反対し、この戦争にも反対です。私たちは、これよりも良い解決策を見つけるべきです」
1979年のイラン革命で亡命したパーレビ国王の息子で、現在亡命中のReza Pahlavi氏は、6月17日にビデオ演説を行い、イランにおける体制転換を改めて訴え、「イラン国民が、イランを取り戻す時が来た」「今こそ立ち上がる時だ!」と呼び掛けた。(了)
出典元:BBC:‘A choice of two evils’: Young anti-regime Iranians divided over conflict(6/20)