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慢性的な痛みを発症?!怪我をした虫に関する可哀そうな研究結果が明らかに

慢性的な痛みを発症?!怪我をした虫に関する可哀そうな研究結果が明らかに
Unsplash

虫の多いこの季節、自宅内や屋外でのバーベキュー中などに周囲を飛び回る虫を叩きつぶそうとし失敗する、なんていう場面は多くとも、そのような暴力”により怪我を負った虫たちがその後どうなるのか、気にかける人は少ないだろう。

 

そんな虫がその後一体どのような悲劇に見舞われるのか、最新の研究が明らかとした事実が興味深い。

 

負傷した虫は怪我が完治した後も慢性的な痛み

 

怪我を負った虫がその後どうなるのかを研究で明らかとしたのは、オーストラリアのシドニー大学で痛みに関する研究等を行うGreg Neely准教授率いるチーム。研究結果は科学ジャーナル『Science Advances』に掲載された。

 

研究においては、ハエの一種であるショウジョウバエが怪我から完治した後、慢性的な痛みを感じることがあることが遺伝学的に証明されたという。

 

「人々は虫が何らかの痛みを感じるということについて、あまり考えません」というNeely氏。

 

「しかし多くの異なる種の無脊椎動物が、我々が苦痛であると感じる危険な刺激を感知し、避けることが出来ることが明らかとなっています」

 

Neely氏は、人間を除く生物における熱や寒さ、さらには負傷といった潜在的に有害な刺激を探知する感覚は“侵害受容”と呼ばれる一方、単純化させるため虫が感じるこのような感覚について“痛み”と言及。

 

虫も“痛み”を感じることが出来ることは知られていた一方、「虫が人間の患者と同様に、一度の負傷により通常痛みを伴わないような刺激に対しても長期にわたり過敏になってしまうことがあることは、知られていませんでした」としている。

 

 

Pixabay

虫が怪我の治癒後に慢性痛を感じる理由とは?

 

そもそも慢性痛とは、怪我が完治した後にも継続するしつこい痛みのこと。そのタイプとしては、炎症性のものと神経性のものの2種類が存在する。

 

今回の研究においては、このうち神経性のものに着目。

 

ショウジョウバエの脚の一本に位置する一つの神経を損傷させ、それが完治した後に調べると、神経を損傷させなかった脚が過敏になっていることが判明したという。

 

これについてNeely氏は、「ショウジョウバエは激しい傷を負った後、過敏になると共に、死ぬまで自らの身を守ろうとするんです」と説明する。

 

さらに研究チームは、ショウジョウバエにおいてこのような反応がいかにして起きるか解明するべく、遺伝学的に精査。

 

Neely氏によると、ショウジョウバエは“痛み”のメッセージを身体で受け取るが、そのメッセージは知覚神経からハエにおける脊髄にあたる腹神経索と呼ばれる中枢神経系へと伝わるとのこと。

 

一方この神経系においては“抑制性ニューロン”と呼ばれ、状況に応じて痛みの知覚を許容したり遮断したりする、いわば“ゲート”のような役割を果たすものが存在する。

 

しかし大きな怪我を負った後の虫においては、傷ついた神経は全ての神経索中の“積み荷”を捨て、さらに痛みの抑制が永久的になくなってしまう。

 

そのため痛みの抑制がなくなった虫は、過敏になり慢性的な痛みを感じるようになってしまうのだという。

 

多足類における神経系の略図(Wikipedia Common)

ハエの慢性痛の研究は人間にも応用できる

 

Neely氏は、動物において大きな怪我を負った後に痛みの抑制がなくなってしまうのは、危険な状況を生き残るため必要である一方、「人間がそのような抑制を失ってしまえば、それは人生を惨めなものにしてしまいます」という。

 

「我々は心地よく痛みのない生活を送るため、その抑制を取り戻さなければならないのです」

 

一方、今回の研究において明らかとなった事実は、人間の慢性痛の治療においても応用できる可能性があるようだ。

 

「重要なのは、我々は今、ハエやネズミ、さらにおそらく人間における神経性の“痛み”を引き起こす大きななステップが、中枢神経系における痛みを感じる抑制の喪失である、ということを知っているということです」というNeely氏。

 

さらにこれを踏まえ、「我々は(慢性痛の)根本原因を標的とし、痛みを永遠に止める新たな幹細胞治療や薬の開発に集中しています」

 

Pexels

 

大きな怪我を負ったハエが、その後慢性的な痛みを感じるようになってしまうことを明らかとした今回の研究。周囲を飛び回るハエがイラつくものであることには変わりないが、怪我を負った彼らのその後の苦痛を想像し、時にはそれを思いとどまっても良いのかもしれない。(了)

 

出典:the University of Sydney:Thwack! Insects feel chronic pain after injury (7/11)

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