土星の衛星「エンケラドゥス」から巨大な水蒸気が噴出、科学者が発見
土星の衛星から、これまで見たこともない、巨大な水蒸気が噴出しているのが確認された。
土星で6番目に大きな衛星
NASAなどの科学者らは昨年11月、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で、土星の6番目に大きな衛星である「エンケラドゥス」を観測。
宇宙望遠鏡の近赤外線分光器で撮影した画像に、巨大な水蒸気が噴出しているのを発見したという。
この研究の筆頭著者で、NASAのゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者であるジェロニモ・ビラヌエバ氏は、「私たちは、その大きさと広がりに本当に感動しました」と述べている。
高さ9700kmまで到達
もともと氷の外皮の下に深い塩水の海を持つ「エンケラドゥス」は、水蒸気を宇宙空間に放出することが知られていたという。
しかし今回、水蒸気は高さ6000マイル(約9700km)の宇宙空間にまで達しており、1秒間に300リットルの割合で水を噴出したと推定された。
幅が300マイル(約480km)しかない「エンケラドゥス」から、これほど大量の水蒸気が放出されるのが確認されたのは、これが初めてとされている。
研究者は「Nature Astronomy」に掲載された論文において「この観測は、海洋の世界(エンケラドゥス)を詳細に理解するJWSTの能力を示すものであり、エンケラドゥスの探査に新たな窓を開き、将来のミッションに備えることができる」と述べている。
水蒸気が間欠泉のように噴出
過去の「カッシーニ探査機」などによる土星衛星の観測では、氷の粒子や有機化学物質を含んだ水蒸気の噴出が、「タイガーストライプ」と呼ばれる表面の割れ目から、間欠泉のように噴出しているのが確認されているという。
「エンケラドゥス」は土星を1周するのに1日しかかからないほど速いため、水蒸気は衛星の軌道に流れ込み、「トーラス(torus)」と呼ばれるドーナツ状の巨大なリングを形成する。
望遠鏡のデータでは、「エンケラドゥス」から排出される水の約30%がトーラスに流れ込み、残りは土星の周囲に漂うそうだ。
また10年かけて調査した「カッシーニ探査機」は、「エンケラドゥス」から噴出する噴煙を初めて画像化し、蒸気の流れの中を飛行して、その成分を採取。
その結果、Nasaの科学者たちは2017年、「エンケラドゥス」には水、エネルギー、関連する化学物質など、人間が知る生命に必要なほぼすべての成分があると報告した。(了)
出典元:The Guardian:Astronomers see 6,000-mile water vapour plume blasting from Saturn moon(5/30)