カンヌ映画祭で「ネットフリックス」作品にブーイング、その背景とは?
フランスで開催されているカンヌ映画祭で、動画配信会社の映画が観客からブーイングを受けて、一時上映が中断するという事態が発生した。
●5分間もブーイングが続く
動画配信大手の米「Netflix(ネットフリックス)」は、アメリカと韓国の合作映画『Okja』をカンヌ映画祭に出品していた。
しかしカンヌ映画祭の審査委員長であるPedro Almodóvar監督は、「ネットフリックス」が自社の作品をフランス国内の映画館で上映しないとしていたことを受け、「彼らの作品が映画祭でパルムドール(最優秀作品賞)に選ばれるべきではない」と発言。
これは映画館の大きなスクリーンでの没入体験を大切にしたいという観点から述べられたものとされているが、この意見に賛同していたジャーナリストや観客らが19日、会場で『Okja』が上映される直前、ブーイングの大合唱を行ったという。
しかもスクリーンに「ネットフリックス」のロゴが現れた途端にヤジを飛ばす者も現れ、騒ぎは5分間も続いたそうだ。
●映像の縦横の比率が異なり上映中断
もっとも実際に上映が始まると騒ぎは収まったが、スクリーンに映し出された映像は縦横の比率が異なり、上部が刈り込まれ、出演者であるTilda Swintonさんの顔の一部も欠けていたという。
その結果、再び会場は騒ぎ始め、結局上映が一時中断されたと言われている。
もっとも15分後には問題は解決されたが、その場にいた人々は今回の騒動のことを「まるで刑務所で暴動が広がっているような雰囲気だった」と形容したそうだ。
●映画館で上映しないことへの批判
そもそも今回の映画祭では「ネットフリックス」の作品を上映すべきかについて、当初から激しい論争が繰り広げられてきたという。
審査委員長であるPedro Almodóvar監督も「大画面が視聴者を夢中にさせる。その力のために戦い続ける。パルムドールなどの賞が映画に与えられながら、その映画を大画面で観られないなど考えられない」と強調。
その結果、主催者側は来年からは、フランスの映画館で上映されることをカンヌ映画祭への出品の条件にしたと言われている。
一方、「ネットフリックス」側は「守旧派が結束して、私たちに対抗しようとしている」と反発。同社の支持者らも、国内の劇場で上映される映画について公開後3年間にわたり、会員制ウェブサイトでのストリーミング配信を禁じているフランスの規制を非難したそうだ。
ハリウッド・スターであるウィル・スミスさんも、「ネットフリックス」を擁護。
ネットフリックスは若者が自主制作映画に触れる機会をつくっていると主張し、「わが家について言えば、ネットフリックスには恩恵しかない。子どもたちが他では見ることのなかった映画を見られるからだ」と説明したという。
●上映後はスタンディング・オベーション
映画『Okja』は韓国の江原道にある深い森に住んでいた若い女性が主人公で、資本主義の権化である企業から、友人である巨大動物が誘拐されるのを防ぐ物語とされている。
上映が終わった後は会場から暖かい拍手が送られ、スタンディング・オベーションが4分間も続いたという。
大きなスクリーンでの没入感を求める人がいる一方、若者は動画配信を支持している。今後どうなるのか、先行きを見守っていきたい。(了)
出展元:INDEPENDENT:Cannes screening of Netflix movie halted after non-stop booing(5/19)