これまで幾度にもわたり解読が試みらられてきた、謎の古文書「ヴォイニッチ手稿」。その謎がついに明らかになったとして、注目が集まっている。

 

口語ラテン語で書かれた治療の指南書？

 

ヴォイニッチ手稿の解読に成功したとするのは、英ブリストル大学の研究者、Gerard Cheshire氏はじめとする研究チーム。研究結果はラテン語から変化した言語とその言語圏の文化についての研究を掲載する学術誌、「Romance Studies」に掲載された。

 

これによるとヴォイニッチ手稿は、“俗ラテン語”という言語で記されているとのこと。

 

俗ラテン語とは、古代ローマの時代から使用されて文献にも残された言語であるラテン語（古典ラテン語とも呼ばれる）に対し、現在は死語となっているローマ帝国内で話されていた口語ラテン語のことを指す。

 

 

手稿を編集したのは、イングランド王ヘンリー8世の王妃として知られ、1509年から1533年にかけてイングランド王女としての座にあったキャサリン・オブ・アラゴンに仕えた修道女らとみられているという。

 

またCheshire氏らの研究によると、その内容としては治療に関するものが中心となる一方、セックスや育児に関する指南、さらには心理学や薬草を用いた治療法までもが含まれているそうだ。

 

ヴォイニッチ手稿とは？

 

“世界で最も謎めいた文書”として知られるヴォイニッチ手稿の存在が、初めて知られることになったのは1912年のこと。この年ポーランド人の本屋、Wilfrid Voynichがこれを購入し、彼の名にちなんでヴォイニッチ手稿と呼ばれるようになった。それ以前の所有者については明らかとなっていない。

 

 

手稿にはアルファベットを用いた未知の言語による文書と、200を超える絵が記されている。

 

しかし描かれた絵のうち半分は未知の植物や不可解な図形となっており、Voynich自身もその謎を解き明かすことを試みるも失敗している。

 

以来、ヴォイニッチ手稿の解読には多くの研究者らが挑戦。その中にはCIAやNASAまでもが含まれているが、いずれも解読することは出来なかったという。

 

一方、ヴォイニッチ手稿が書かれた年代としては、放射性炭素年代測定法により15世紀初頭というのが明らかとなっている。

 

ヴォイニッチ手稿“解読”には反論も

 

ただし、今回の研究結果に対しては反論も上がっている。

 

中世に関する研究等を行う組織「Medieval Academy of America」のLisa Fagin Davis氏は、ヴォイニッチ手稿に記された言語は俗ラテン語ではないと指摘。

 

 

さらにCheshire氏が所属するブリストル大学も、大学のホームページ上から研究に関するページを削除。

 

“この研究は完全に執筆者ら個人のものであり、ブリストル大学の教養学部や中世研究センターとは何ら関連していない”などとし、Cheshire氏の見解とは距離を置く姿勢を見せている。

 

 

解読されたとされる“世界で最も謎めいた文書”、ヴォイニッチ手稿。Cheshire氏による研究結果が果たして真実に迫ったものであるのかはさておき、ヴォイニッチ手稿が多くの人の好奇心を惹き付けて止まないことだけは確かだ。（了）

 

出典：Fox News：Voynich manuscript mystery continues as experts question whether ‘alien’ code has really been cracked（5/20）

出典：NEWS.com.au：Long-dead language cracked by experts, revealing ancient sex tips and abortion advice（5/16）

出典：The Guardian：Latin, Hebrew … proto-Romance? New theory on Voynich manuscript（5/15）

出典：Forbes：The Voynich Manuscript: Has The Mystery Of The Book Nobody Can Read Been Solved?（5/16）