【ガザ地区】イスラエルが米政府の人道改善要求を無視、国際人権団体が主張

X_Jeremy Konyndyk

多くの国際人権団体は、ガザ地区での人道状況を改善するよう求めるアメリカ政府の要求を、イスラエル政府が順守していないと主張している。

「アメリカの法律に違反していない」

アメリカのバイデン政権は10月13日、ガザ地区での人道状況を改善させるため、イスラエル政府に支援物資の搬入量を増やすよう要求し、もし30日以内に改善がみられなければ軍事支援を縮小すると明らかにした。

そして11月12日、30日の期限を迎えたが、まだアメリカ政府は正式な判断を下していない。

イスラエル軍は12日、ガザ地区北部に、食料や数千リットルの水などの支援物資を運び込んだと発表。また10月以降も、国連機関と協力して、ガザ地区北部の病院から患者や、その家族などを退避させているなどと主張した。

このような発表があったためか、ブリンケン国務長官は12日、イスラエルのロン・ダーマー戦略大臣と会談し、「こうした変化が、ガザの悲惨な人道状況の実際の改善に確実につながる」とし、その重要性を強調したという。

また同時に、アメリカ国務省のパテル報道官も、イスラエルが要求に応じたかどうかとの質問に対し、「アメリカの法律に違反しているという評価は行っていない」と述べたという。

さらにニュースサイトの「Axios」は、政府関係者の話として、ブリンケン国務長官がガザ地区での人道状況を理由に、イスラエルへの軍事支援を「減らさない」ことを決定したと報じた。

イスラエルの人権団体も批判

これに対してイスラエルの人権団体「Gisha（移動の自由法律センター）」は12日、イスラエル政府が、ブリンケン国務長官の書簡で指定された要件を満たしておらず、代わりにガザ地区へ搬入許可された物資の量が「大幅に減少」しているとし、次のように非難した。

「状況は特にガザ北部で深刻です。イスラエルはその地域の包囲を強化し、住民を飢えさせ、強制的に立ち退かせる計画を実行してきた。たとえイスラエルがアメリカの要求を順守したとしても、それだけでガザの大惨事を好転させることはできないだろう」

またノルウェー難民評議会（NRC）も、イスラエルが国際法上の義務に違反し、ガザへの支援物資の供給をさまざまな方法で妨害していると主張。NRCのシャイナ・ロウ氏は、アルジャジーラに次のように語った。

「何よりもまず、彼ら（イスラエル側）は検問を通って、物資が入るのを妨害しています。支援物資は恣意的に拒否され、冬を迎える人々が避難所を建てるのに役立つ、木材などの必需品の搬入も許可されていません。このような検問への通過要求が、1か月以上拒否されることもあるのです」

さらにNRCを含む8つの国際人道支援団体（セーブ・ザ・チルドレンやRefugees International、Anera、オックスファム、MedGlobal、ケア、マーシー・コーポレーション）は報告書を発表し、イスラエル政府がガザ地区の人道支援に関する、アメリカ政府の基準を何ら満たしていないと評価。ガザ地区での人道支援に関するアメリカの法律と国際法も、遵守していないと述べた。