皮膚に直接電子回路を描く3Dプリンター、将来は軍事や医療に転用も可能か
人間の皮膚にウェアラブルセンサーや太陽電池用の電子回路を、直接取り付けられる3Dプリンターが開発され、注目を集めている。
プリンターは軽くて低価格
これを開発したのはアメリカにあるミネソタ大学の研究者たち。
彼らは電気を通す銀の粉を含ませたインクを使い、世界で初めて直接人間の手に電子回路を描く(貼り付ける)3Dプリンターを開発したという。
この回路にはさまざまなセンサーとしての機能を持たせることが可能で、太陽電池を組み込むこともできるとされている。
しかもこの3Dプリンターは、非常に軽く携行も可能。コストも400ドル(約4万3800円)弱とされ、お手頃価格になっているそうだ。
プリンターが手の動きに自動的に適応
このプリンターについてはすでにYouTubeでも紹介されており、そこではLEDライトを点灯させる電子回路を手に取り付ける様子が映し出されている。
動画ではまず、手の甲にLEDライトのモジュールを取り付け、その周りを囲むように手の位置の目安となるマーカーを設置。その後、プリンターでスキャンし、手のどの部分に回路を作るかを確認している。
その後、常温で硬化する銀のペーストがプリンターから流れ落ち、手の甲に円を描きながら回路を作り出していった。そして何度か層を重ね、最後にワイヤレス給電用のコイルを近づけると、LEDライトが点灯する様子が映し出される。
発表されたリリースによると、この技術のカギとなるポイントは、プリンターが手などのわずかな動きに適応できる点だという。
これは最初に設置したマーカーを基準にスキャンしたためで、これにより手が動いてもコンピューターがプリントする位置をリアルタイムで、自動的に認識する仕組みになっているそうだ。
しかもこの回路は使い終わったら簡単にピンセットではがしたり、水で洗い流したりできるとされている。
未来のスイス・アーミー・ナイフ
開発を率いたMichael McAlpine教授は、これらのプリンターが今後は軍事用として利用される可能性があるという。
例えば戦場で兵士が直接センサーの回路を3Dプリンターで塗ることにより、化学兵器や生物兵器を検知するのをアシストできるようになるそうだ。教授は次のように語っている。
「私たちは兵士がバックパックからプリンターを取り出し、彼らが必要とする化学兵器のセンサーやその他の電子部品を直接皮膚にプリントする姿を想像します。これは未来の“スイス・アーミー・ナイフ”なのです。つまり彼らが必要とする全てが、この携帯型プリントツールに詰まっているのです」
また研究者らはこの新しい3Dプリンターの技術を使い、マウスの傷口に生体細胞を直接プリントするためバイオインクを使うことにも成功しており、今後皮膚の病気を癒すための新しい治療法に結びつく可能性もあるという。
これまでは皮膚に埋め込むセンサーや、皮膚に直接ステッカーを貼り付けて健康面を管理する電子タトゥーなどが登場しているが、このような3Dプリンターによるものも新しい可能性を秘めているに違いない。(了)
出典元:INDEPENDENT:The new technology can be used to print biological cells into wounds to help them heal(4/27)
出典元:University of Minnesota:Researchers 3D print electronics and cells directly on skin(4/25)