ウーパールーパーの組織再生の鍵を握る遺伝子を発見:イェール大学
ウーパールーパーの膨大な遺伝子の中から、再生機能に関わるゲノムを特定するための方法が開発された。
複雑なゲノムを解読する方法を開発
この研究に携わったのは、アメリカのイェール大学などの研究者たちだ。
分子細胞発達生物学部、Craig Crews研究室のParker Flowers氏らは、再生に関わる少なくとも2つの遺伝子を特定するため、ウーパールーパー(メキシコサラマンダー/アホロトール)の複雑なゲノムを回避するための巧妙な方法を発見したという。
そしてこの研究結果を1月28日に、科学誌の「eLife」において発表した。
四肢の再生に関わる遺伝子を特定
そもそも新しい塩基配列技術や遺伝子の編集技術の出現によって、研究者らは四肢の再生に関わる数百に及ぶ遺伝子候補のリストを作れるようになったという。
しかしウーパールーパーにおいては、DNAが繰り返された配列が巨大なエリアに渡っており、ゲノムが膨大なサイズになるために、これらの遺伝子の機能を調査することが困難だったそうだ。
実際、人のゲノムは約30億の塩基対からなるが、体長25cmほどのウーパールーパーは人の10倍以上もある320億の塩基対を持っており、その巨大なゲノムを持つことからなかなか研究されてこなかったとも言われている。
そこでFlowers氏と同じ研究室のLucas Sanor氏らは、四肢の再生に関わると考えられる25個の遺伝子を追跡できる「マーカー」を作り出すため、複数のステップを踏んだ遺伝子編集技術を使用。
この結果、四肢が切断された場所で形作られる分裂細胞の塊で、なおかつウーパールーパーの尻尾の部分的な再生にもかかわっている「ブラスティーマ(blastema)」の中から、2つの遺伝子を特定したという。
脳の一部でさえ再生できる
そもそもウーパールーパーは他にはない再生機能を持っており、足だけでなく心臓の一部や脳の一部を失っても、問題なく再生させられると言われている。
そのためこの再生機能の遺伝学的基礎を見つけられれば、人間においても損傷した組織を回復させる方法を見つけることが可能になると言われてきた。Flowers氏は次のように語っている。
「人間も似た遺伝子を持っているため、科学者もいつか、傷の修復を早め、組織を再生させるのに役立つ、それらを起動(活性化)させる方法を見つけられるかもしれません」(了)
出典元:Yale News:Tiny salamander’s huge genome may harbor the secrets of regeneration(1/28)