米下院で反ユダヤ主義に関する法案を可決、言論の自由を侵害するとの批判も

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アメリカの下院議会で5月1日、反ユダヤ主義に関する法案が可決された。

米下院、320対91で可決

この法案は、「反ユダヤ主義啓発法（Antisemitism Awareness Act）」と呼ばれており、ニューヨーク選出の共和党議員、Mike Lawler氏が主導し、民主党の共同提案者15人も参加したという。

そして5月1日、下院議会で採決が行われ、320対91で可決された。ただし施行されるには今後、上院でも可決される必要がある。

この法案では、連邦差別禁止法を執行する際に、「国際ホロコースト記念同盟（International Holocaust Remembrance Alliance）」による反ユダヤ主義の定義を採用することを、教育省に義務付けているそうだ。

ユダヤ人に対する憎しみも含めた認識

「国際ホロコースト記念同盟」の定義では、「反ユダヤ主義とは、ユダヤ人に対する憎しみとして表現される場合も含めた、ユダヤ人に対する特定の認識」とされている。

しかもこの定義には、現代のイスラエルの政策をナチスの政策と比較し、イスラエルの国家を人種差別的と主張することにより、ユダヤ人の自決権を否定することも含まれているという。

つまりこの法案が施行されれば、現在ガザ地区でジェノサイドを行っているイスラエルの右派政権の政策を、ユダヤ人のジェノサイドを行ったナチス・ドイツと比較することが、連邦差別禁止法に抵触することになる。

現在、アメリカの多くの大学では反イスラエルの抗議デモが行われており、参加している学生たちはすでに、反ユダヤ主義的だとして非難に直面しているそうだ。

反ユダヤ主義の定義を拡大するもの

反対票を投じた、ユダヤ人である民主党のジェリー・ナドラー下院議員は、この法案が一方に対して、不当に利益をもたらす状況を作り出すものであり、憲法で保護された言論の自由を脅かす可能性があると主張した。

またアメリカ・イスラム関係評議会（CAIR）も、この法案が反ユダヤ主義の定義を拡大するものであると非難。次のように批判した。

「私たちは今夜、大学での反ユダヤ主義に関する、一方的で不誠実な法案の承認に投票したアメリカの下院議員を非難します。その法案は、パレスチナ人に対する人種差別を無視し、イスラエル批判と反ユダヤ主義を同一にするものだからです」

さらに一部の専門家も、「国際ホロコースト記念同盟（IHRA）」から引用したこの新しい定義が、アメリカにおけるイスラエル批判を、反ユダヤ主義としてレッテルを貼るのに利用されるのではないかと懸念しているという。

全米の大学に警官隊が突入

アメリカでは現在、数多くの大学で反イスラエルの抗議デモが行われているが、5月1日の夜から5月2日の朝にかけて、全米のキャンパス内に警官隊が突入し、300人以上の学生らを逮捕。これまでに、合計で2000人以上が逮捕されたという。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、警官隊が突入してテントを排除。200人の学生を逮捕したそうだ。

またニューハンプシャー州のダートマス大学でも、90人以上の学生が逮捕され、ニューハンプシャー大学とニューヨークにあるバッファロー大学でも数十人が逮捕されたという。

さらにオレゴン州でも5月2日、4月29日からデモ参加者に占拠されている学校の図書館に警察が突入した。

アメリカのバイデン大統領は5月2日に声明を発表し、「暴力的な抗議活動は保護されないが、平和的な抗議活動は保護される」と主張。「破壊行為、不法侵入、窓ガラスの破壊、キャンパスの閉鎖、授業や卒業式の強制中止、これらはどれも平和的な抗議行動ではない。抗議する権利はあるが、混乱を引き起こす権利はない」と述べたという。

しかしユダヤ人の上院議員であるバーニー・サンダース氏は「彼ら（学生ら）が外に出ているのは、『親ハマス』だからではない。イスラエル政府が現在ガザで行っていることに、激怒しているから出ているのだ」と反論した。