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DNAの落とし穴、検査の限界を示す「マイクロキメリズム」の事例とは?

DNAの落とし穴、検査の限界を示す「マイクロキメリズム」の事例とは?
flickr_Tim Reckmann

DNAは現在、人間のアイデンティティを示す究極の指標、つまり自分の起源や両親、そして家族や先祖との繋がりを決定づける確実なものとみなされている。

 

しかしDNA検査の限界を示す事例が、ある著者によって示された。

 

母子鑑定で母親ではないと判断

 

作家で科学ジャーナリストのLise Barnéoud氏は、2025年に出版された著書『隠された客:移動する細胞とマイクロキメリズムの新科学が人間のアイデンティティを再定義する』の中で、その事例を検証している。

 

それはある女性が母子鑑定で、自分が出産した子供の母親ではないと判断されたケースだ。

 

その女性とは、リディア・フェアチャイルドさん。彼女は26歳の時、2人の子供を1人で育てるため生活保護を申請したという。

 

そして申請手続きの一環として、フェアチャイルドさんは母子鑑定を受けたのだが、数週間後、彼女は社会福祉局との面談に呼ばれ、「子供たちの母親ではない」と非難されたそうだ。

 

社会福祉局側は「DNAは100%確実で、嘘をつかない」と主張し、フェアチャイルドさんには福祉制度を欺こうとした疑いがかけられ、捜査が行われたという。

 

フェアチャイルドさんは州の検察官に、妊娠中の自分の写真を提示。また彼女の母親や子供たちの父親、そして担当の産婦人科医も皆、フェアチャイルドさんが出産したと証言した。

 

しかし結局、法廷で3回も審問を受け、知り合いの弁護士もフェアチャイルドさんの主張を信じてくれなかったそうだ。

 

出産直後の子供ともDNAが一致せず

 

また当時、フェアチャイルドさんは3人目の子供を妊娠しており、裁判官は出産後、すぐに母子両方の検査を命じた。

 

しかし子宮から生まれてきた子供も、検査ではDNAが一致せず、フェアチャイルドさんの子供ではないと結論付けられたという。

 

そこで弁護士のアラン・ティンデル氏が、カレン・キーガンさんのケースを記した科学論文を見つけ、フェアチャイルドさんを信じて、弁護につくことになった。

 

カレン・キーガンさんは2002年に腎臓移植を必要とした際、家族へのドナー検査で、彼女が3人の息子のうち2人の母親ではないことが判明し、医師たちが困惑したという。

 

異なるDNAを持つ細胞を発見

 

ティンデル氏は、ボストンの研究チームに連絡を取り、フェアチャイルドさんの検査を依頼。検査官はまず、フェアチャイルドさんの血液を調べたが、キーガンさんと同様、たった1種類の細胞しか見つからなかったという。

 

また彼女の皮膚、髪、頬の細胞を調べたが、やはり同じだったそうだ。

 

その後、検査官はフェアチャイルドさんの子宮頸部の細胞を採取し、異常がないかを調べるための医学的検査を行った。

 

すると、異なるDNAを持つ細胞を発見。それは、フェアチャイルドさんの子供たちのDNAと一致していたという。

 

結局、検査官は子供たちと一致するDNAが、生まれてこなかったフェアチャイルドさんの双子の姉妹のものであると結論付けたそうだ。

 

生殖細胞系列キメリズム

 

この現象は、生殖細胞系列キメリズムと呼ばれ、卵子や精子を形成する組織にキメラ細胞(異なる細胞)が存在するケースになるという。

 

そして本のタイトルにあたる「マイクロキメリズム」とは、遺伝的に由来の異なる少数の細胞が体内に定着し、存続している現象を指す。例えば、妊娠中は母親と胎児の間で少量の細胞の相互移動が発生し、妊娠終了後も体内に定着することが明らかになっている

 

「1人の個人に1つのゲノム」という考えは、実は現実の複雑さを完全に捉えきれておらず、今回のケースでも、長年、揺るぎない確信と思われていたものが、実は不完全な知識であることが判明した。

 

「Livescience」は、「DNA鑑定によって必ず、人の身元や出自が明らかになると盲信するには、私たちは自身の生物学についてあまりにも知識が乏しい」と指摘している。(了)

 

出典元:Livescience:‘It doesn’t lie. So who are you?’: What happens when DNA tests show a woman is not the mother of the child she gave birth to?(2/27)

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