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建設業のパラダイムシフト!3Dプリンターによる格安住宅が注目を集める

建設業のパラダイムシフト!3Dプリンターによる格安住宅が注目を集める
New Story/Icon

3Dプリント技術が近い将来、製造分野に革命的な変化をもたらす可能性が囁かれる昨今。米国で3Dプリント技術による住宅が開発され、注目を集めている。

 

24時間以内に建設可能な住宅

 

3Dプリンターによる住宅を開発したのは、米国テキサス州オースティンのスタートアップ企業「ICON」と、カリフォルニア州サンフランシスコの非営利団体「New Story」だ。

 

両社は移動式3Dプリンターを用い、24時間以内に住宅を建設することが可能であるとしている。

 

一軒の住宅を建設するのにかかる費用も4000ドル、日本円にして42万4000円ほどに抑えることができるとのことだ。

 

両社は既にオースティンにおいて、3Dプリンターにより建設した住宅を公開。

 

さらにその建物は、米国において住宅として販売するために必要とされる要件をも満たしているとのことだ。

 

New Storyの共同創設者Matthew Marshall氏は、「我々はハリケーンや地震にも耐えられる安全で強靭な住宅が3Dプリント技術で建設可能であるということを証明するため、米国の最も厳しい住宅建設にかかる規制を満たす家を建設したいと考えている」と語っている。

 

世界における住宅事情を変える可能性

 

世界資源研究所(World Resources Institute)の調査によると、昨年世界では3億3000万もの家族が住むのに適切な家を持っていなかったという。

 

さらにこのような状況は近年悪化傾向にあり、中でもラテンアメリカにおける成長著しい都市のスラムには、人が居住するにはあまりにもお粗末な金屑と木材による掘っ立て小屋が立ち並ぶような状態だと指摘している。

 

 

今回の計画は、このような世界における貧困層の住宅事情を変える可能性があるそうだ。

 

ICONの共同創設者 Jason Ballard 氏は、「住宅建設へのアプローチは長きにわたり変化しておらず、まるで従来以外の方法を想像することですら忘れられてしまったかのようだ」と語る。

 

3Dプリントにより1レイヤーずつ建設

 

しかし住宅を建設するという複雑な工程を、一日以内に終了させることを可能にさせた3Dプリント技術とは、一体どのようなものなのか。

 

そのカギとなったのはVulcan 3D printerと呼ばれるプリンターの開発だ。

 

この3Dプリンターはレール上を移動することにより、住居を1レイヤーごとに少しずつ建設することが可能だという。

 

New Story / Icon

 

「我々がやっていることを差別化させる要因としては、住宅をまるごと3Dプリントにより建設しようとしていることだ」というBallard氏。

 

さらに3Dプリンターにより住宅の建設を試みる企業は他にも存在するものの、それらは家の一部を3Dプリントにより作り出すに留まると指摘する。

 

また3Dプリンターにおいては、廃棄物をほぼ出すことなく住宅を建設することが可能だという。

 

3Dプリントの住宅はコンクリートを使用

 

一方、現在Vulcan 3D printerによる住宅の建築材として使用されているのは、コンクリートだ。

 

これについてMarshall氏は、米国で建設材の主流となっている石膏を用いたものなどの他の素材と比較しても、コンクリートには弾力性がありエネルギー効率の良い素材であることを指摘。

 

ただICONは今後、他の素材も使用することを検討しているとのこと。

 

また3Dプリンターによる建設では、曲線を描くなどのデザインも自由自在であるという。

 

New Story

 

3Dプリンターによる住宅建設に残された課題

 

しかし3Dプリンターによる住宅建設には、まだ課題も残されている。

 

New StoryとICONの両者は、将来的には3Dプリントによって住宅を一戸建設するのにかかる時間は24時間以内、あるいは12時間以内に留まるとするものの、オースティンにおけるデモンストレーションの際には、一戸の建設に48時間ほどかかってしまったそうだ。

 

さらに建設費用も一戸で1万ドル、日本円にして100万円以上かかってしまったという。

 

今後3Dプリントによる住宅を普及させていくためには、建設費用の削減とさらなる建設時間の短縮が求められることになるだろう。

 

エルサルバドルに世界初のコミュニティ建設も

 

一方、New Storyは既に3Dプリンターによるコミュニティの建設計画にも取り組み始めている。

 

同社はラテンアメリカの発展途上国、エルサルバドルにおいて、世界初となる3Dプリンターによる住宅地の建設を計画しており、2018年以内には建設を開始させたいとしている。

 

住宅地には100戸もの3Dプリンターによる住宅が建設される予定であるという。

 

しかしBallard 氏は3Dプリントによる住宅建設は発展途上国のみに向けたものではなく、住宅建設の将来を担うものになり得るとしている。

 

「これは住宅建設における革命的なパラダイムシフトであり、建設の速さ、費用、デザインの自由度、エネルギー効率、維持、弾力性、廃棄、そして快適さの全てにおいて優れている」

 

さらにBallard 氏は「もしあなたがエルサルバドルかサンフランシスコで家を建設しようとしており、少なくとも費用と持続可能性、人類の福祉について気にかけているのであれば、3Dプリンターによって建設するべきだ」と付け加える。

 

3Dプリンターにより住宅を建設するという画期的な試み。この技術がさらに発展し、質の高い住宅を誰もが手に入れることができる日が来れば、世界はきっと変わるに違いない。(了)

 

 

出展:HowStuffWorks:3-D-Printed Houses Could Revolutionize Affordable Housing (3/27)

出展:Quartz:You can now 3D-print a house in under a day(3/12)

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