トランプ政権が進める「反武器化基金」、物議を醸す理由とは?

アメリカの司法省は5月18日、トランプ氏が内国歳入庁(IRS)に対して起こしていた訴訟の和解の一環として、「反武器化基金」を作ると発表した。これはどのような内容なのか?
内国歳入庁に対し訴訟を起こす
2018年から2020年にかけて、トランプ氏の納税申告書が、ニューヨーク・タイムズ紙に漏洩し、同紙は2020年、これらの納税情報を引用し、トランプ氏が15年間にわたり所得税をほとんど、あるいは全く納めていなかったと報じた。
そして2023年、IRSの元契約職員であるチャールズ・エドワード・リトルジョン氏がこれらの納税申告書を漏洩させたとして告発され、彼は2024年に漏洩を認め、懲役5年の判決を受けた。
今年1月、トランプ氏と2人の息子らは、内国歳入庁(IRS)と財務省が自身らの納税情報の漏洩を防げなかったとし、100億ドルの損害賠償を求めて提訴した。つまりアメリカの大統領が、自らの政権の一部である機関を訴えたことになる。
司法省は5月18日、この訴訟でトランプ氏と和解し、条件として内国歳入庁(IRS)が今後、トランプ氏と家族、および関連企業の過去の納税申告を永久に調査しないと明らかにした。
また司法省は和解の一環として、政府による不当な調査を受けた人々を補償するため、「反武器化基金」の設立を発表した。
トランプ大統領に任命されたトッド・ブランシュ司法長官代行は、次のように述べた。
「政府機関は、決してアメリカ国民に対して、武器として利用されるべきではない。司法省は、過去に行われた不正を正し、二度とこのようなことが起こらないようにする意向である。この和解の一環として、法廷闘争や武器化の被害者が意見を述べ、救済を求めるための法的プロセスを確立する」
議会の承認を必要としない
この基金には約18億ドル弱(約2860億円)が拠出され、アメリカ政府が訴訟和解金や賠償金を支払う口座とは別の口座から支払うことになり、議会の承認を毎回必要としない。
そしてアメリカ政府による不当な法的措置によって損害を受けたと考える人々は、この新基金に請求を提出することで、補償を求めることができる。
また基金は2028年12月1日まで運営され、その後は新規請求の受付を停止するという。
連邦議会襲撃事件の犯人への裏金か?
民主党の議員らは、この基金が最終的に、2021年1月6日に連邦議会議事堂で暴動を起こしたトランプ支持者への賠償金として使われるだろう、と批判している。
昨年1月、2期目の大統領就任式当日、トランプ大統領は連邦議会襲撃事件で有罪判決、または起訴された1500人に対し、恩赦または減刑を行った。
下院の民主党議員90人以上は5月18日、この新たな基金の設立を阻止しようと法的文書を提出し、プレスリリースで次のように主張した。
「この税金で賄われる基金は、バイデン政権によって『迫害された』と主張する個人への補償を目的としており、特に1月6日の暴動で有罪判決を受けた者や、『偽選挙人』陰謀に関与した者への支払いを狙っている」
また民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員も、「X」への投稿でこの基金を、「トランプ氏の選んだ手先たちが、1月6日の反乱分子や彼の政治的同盟者に資金を渡すための17億ドルの裏金だ」と表現した。
「最も厚顔無恥な腐敗行為」
連邦議会襲撃事件で議事堂を守った2人、元議会議事堂警察官のハリー・ダン氏と、警察官のダニエル・ホッジス氏も現在、トランプ大統領が設立した「反武器化基金」の創設を阻止しようと訴訟を起こし、この基金を「今世紀における大統領による、最も厚顔無恥な腐敗行為」と非難している。
またダン氏とホッジス氏は、この基金の設立は恣意的かつ気まぐれなものであり、行政手続法に違反するだけでなく、政府による反乱への資金提供を禁じる、合衆国憲法修正第14条にも抵触すると主張。次のように述べた。
「いかなる法律もこの基金の設立を認めておらず、その前提となる和解は不正な偽装であり、その設計は憲法と連邦法に違反している」
この訴状は、ワシントンD.C.の連邦裁判所に提出されており、2人は基金の設立と資金提供を差し止めるよう裁判官に求めている。
また共和党のブライアン・フィッツパトリック下院議員も、トランプ政権の司法省が発表した「反武器化基金」に不快感を示し、「潰す」と警告した。(了)
出典元:Aljazeera:What’s Trump’s ‘anti-weaponisation fund’ and why are legal experts alarmed?(5/21)
出典元:ABC News:2 officers who defended Capitol on Jan. 6 sue to stop Trump’s Anti-Weaponization Fund(5/21)
出典元:BBC:トランプ氏がIRSと和解、自らと家族などに対する税務調査を禁止する条項を追加(5/21)

























