まさに現代の錬金術!科学者が加速器を使い、鉛を金に換えることに成功

世界の科学者が参加する共同研究チームが、ヨーロッパにある加速器を使い、鉛を金に変換させることに成功した。
鉛の原子から陽子を取り出し、金に変える
この研究を進めたのは、ALICE (A Large Ion Collider Experiment:大型イオン衝突型加速器実験)の研究チームだ。
彼らはスイス・ジュネーブ近郊のヨーロッパ共同原子核研究機構(CERN, セルン研究所) にある、世界最大の「ハドロン衝突型加速器(LHC:Large Hadron Collider)」を用いたという。
科学者らは、超高速で原子を衝突させる加速器を使い、鉛の原子から、原子核にある陽子と呼ばれる3つの小さな粒子を叩き出し、金の原子に変える方法を発見。実際に鉛から、金を生成することに成功した。
(原子の中心、原子核の中には陽子と中性子があり、その原子核の周りを電子が回っている。中性子の数が異なる原子を同位体。電子を失ったり、得たりして電気を帯びたものをイオンと呼ぶ)
研究者らは、鉛の原子を正面衝突させるのではなく、原子がわずかにすれ違う時に何が起こるかを調査。それによると、このような瞬間には、原子の周囲に強力な電磁場が生じ、原子が別の元素に変化する可能性があるという。
[Press Update] @ALICEexperiment detects the conversion of lead into gold at the LHC
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— CERNpress (@CERNpress) May 8, 2025
約860億個の金の原子を生成するも…
2015年から2018年にかけて行われた実験期間中、科学者たちは約860億個の金の原子を生成したそうだ。
これは膨大な量に思えるが、科学者によると、その金の総重量は約29ピコグラム(ピコグラムは、1兆分の1グラム)にも満たないという。
つまり小さな宝飾品を作るだけでも、この何兆倍もの量が必要になると考えられている。
「ハドロン衝突型加速器」は、毎秒約8万9000個の金の原子を生成できるが、ほとんどの原子はほんの一瞬しか存在せず、すぐに崩壊してしまう。
ただ最近の装置の改良により、生成できる金の量はほぼ2倍になったが、実用化にはまだまだ遠い状況とされている。
ALICE共同研究チームの科学者であるUliana Dmitrievaワ氏によると、科学者たちがLHCでこのように金の生成を検出し、研究できたのは今回が初めてだという。
またこの研究は、単に金を生成することだけを目的としたものではなく、粒子の挙動を理解するのに役立ち、LHCの改良と将来の粒子加速器の構築に重要だとされている。(了)
出典元:ABC News:Scientists turn lead into gold for 1st time, but only for a split second(5/14)