米軍による麻薬密輸船への攻撃、実際には漁師が殺害された可能性

アメリカのトランプ大統領は、昨年から麻薬密輸船と疑われる船舶を攻撃するよう軍に命じているが、それにより地元の漁師が犠牲になった可能性が指摘されている。
「麻薬の密輸」の証拠も一切公表せず
2025年9月2日以降、トランプ政権はカリブ海と東太平洋で、身元不明の船舶に対して数十件の爆撃を行い、220人以上を殺害した。
トランプ大統領は、船舶に乗っていた人々を「麻薬テロリスト」と呼び、船舶への攻撃は、違法薬物がアメリカ国内に流入するのを防ぎ、人命を救っていると繰り返し主張してきた。
しかしトランプ政権は、死亡した人々の氏名を公表しておらず、攻撃を正当化する「麻薬の密輸」の証拠も一切公表していない。
中東メディア「アルジャジーラ」の番組「Fault Lines」は、行方不明になった漁師らの事件を調査し、残された家族に話を聞くことで、この空爆作戦がもたらした人的被害の一端を明らかにした。
Late on Feb. 16, at the direction of #SOUTHCOM commander Gen. Francis L. Donovan, Joint Task Force Southern Spear conducted three lethal kinetic strikes on three vessels operated by Designated Terrorist Organizations. Intelligence confirmed the vessels were transiting along known… pic.twitter.com/mib9XtptSB
— U.S. Southern Command (@Southcom) February 17, 2026
2人の漁師の遺族らに取材
「Fault Lines」は、カリブ海にある国、セントルシアの漁師の息子である、レイショーン・チャーリーさんに話を聞いている。
チャーリーさんの父親である、ジョセフ・ナシー・ウィリアムさんは今年の2月13日、4人の子供の父親であるリッキー・ジョセフさんと船に乗り、漁に出かけたという。しかしその日、2人とも自宅へ戻ることはなかったそうだ。
そして同じ日、アメリカ軍はカリブ海で小型船を攻撃した際のドローン映像を公開し、麻薬密売容疑者を殺害したと発表した。
しかしチャーリーさんは、その映像に映っていた細長い船が漁船であり、父親が行方不明になった日に乗っていた船ではないかと疑っている。
またリッキー・ジョセフさんの兄であるタイタス・ジョセフさんも、他の漁師からネットで公開されている船の残骸の動画を見せられ、それがリッキーさんの乗っていた船だと分かったという。
タイタスさんは、「Fault Lines」に対し、「(あの船の)船長をしていたのは、僕の弟だ」と語っている。
リッキーさんのパートナーであるルシリア・チャールズさんによると、彼は一家の大黒柱であり、毎年漁業で数千ドルを稼ぎ、彼女と子供たちの生活を支えていたという。
しかしチャーリーさんやチャールズさんも、地元当局やアメリカ政府から回答を得ることができず、また地元の警察署に行方不明届を提出したが、まだ返答はない。
「Fault Lines」は、セントルシアのフィリップ・J・ピエール首相にも漁師2人の失踪について取材を試み、ピエール首相は次のように語った。
「我々は依然として行方不明事件として扱っており、国内の法執行機関が、何が起こったのか解明しようと最善を尽くしている。しかし我々の知る限り、アメリカはこの件に関して、何の情報も提供していない」
船の残骸と所有者を確認
ただジョセフさんとウィリアムさんの事件では、地元警察が彼らの船の残骸を保管しているという。これはアメリカ軍の空爆で残された、数少ない物的証拠の1つとされている。
「Fault Lines」は、警察署の裏手に数カ月間放置され、雑草に覆われていた船の残骸を実際に確認。また舩の所有者を突き止め、それがジョセフさんとウィリアムさんが乗っていた船であるかどうかを確認したという。
その船の所有者は、「Zouti Boats」社のオーナーであるキャメロン・テイリアム氏で、彼は船体の色(外側が緑、底が黒、内側が赤)から、それが自分の所有する船だと認めた。
ただ船の残骸が見つかったとしても、専門家は正義の実現は難しいかもしれないと指摘している。(了)
出典元:Aljazeera:A year into Trump’s boat strike campaign, families search for answers(9/2)


























