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ニコチンが新型コロナの感染を防ぐ?フランス研究機関が新たな治療法の臨床試験を申請

ニコチンが新型コロナの感染を防ぐ?フランス研究機関が新たな治療法の臨床試験を申請
※画像はイメージです(Unsplash)

新型コロナウイルス感染症治療のため、新薬やワクチンの開発に力を入れる世界各国の研究機関。

 

その中でフランスの研究機関が、ニコチンパッチを利用した臨床試験を開始させようとしており、期待がかかっている。

 

新型コロナ感染防止の鍵はニコチンパッチ?

 

新型コロナウイルス感染症に対する新しい臨床試験を開始させようとしているのは、フランス・パリに位置する大学病院「Pitié-Salpêtrière病院」。

 

同病院が新型コロナウイルス感染症治療に効果を発揮する可能性があるとみているのは、なんと“ニコチンパッチ”だ。

 

“ニコチンパッチ”とは低用量のニコチンを含有するパッチのこと。皮膚に貼り付けそこから血液中にニコチンを吸収させることで、タバコを吸いたいという欲求を抑え禁煙治療に効果を発揮するというものとなっている。

 

Pitié-Salpêtrière病院はこれに新型コロナウイルスへの罹患を防ぐ可能性があるとみており、その効果を検証するための臨床試験を行おうとしているという。

 

現在、同病院では保険省からの臨床試験開始許可を待っている状態であるとのことだ。

 

※画像はイメージです(© 2006-2020 LoveToKnow)

感染者の中に喫煙者が非常に少ない、その理由とは

 

しかしニコチンといえば強い依存を有する毒物であり、通常人体に対し有害であるとみなされている。そんなニコチンが含まれるパッチの利用により新型コロナウイルス感染症への罹患を防止できる可能性があるとは、一体どういうことなのだろうか。

 

この根拠としては、Pitié-Salpêtrière病院が行った調査の存在がある。

 

同病院では新型コロナウイルス感染症への罹患が確認された480人に対し、アンケートを実施。このうち350人は入院し、症状が軽いと判断された残りの130人は自宅での療養を行った。

 

すると症状が重く入院を強いられた人においては4.4%が喫煙常習者であったのに対し、自宅療養で済んだ人は5.3%が喫煙者であることが判明したという。尚この年齢の中央値としては前者が65歳、後者が44歳となっている。

 

これに対しPitié-Salpêtrière病院の研究者らは、今回調査対象となった新型コロナウイルス感染者の間においては、年齢層と性別から期待される割合と比較して喫煙者の数が非常に少なかったとしている。

 

フランス公衆衛生局の推定によると喫煙者の割合は44~53歳においては40%、65~75歳においては8.8~11.3%となっており、それと比較していると確かに患者の間における喫煙者の数の少なさが窺える。

 

※画像はイメージです(Unsplash)

 

このような結果が示されたのは、Pitié-Salpêtrière病院における調査だけではない。

 

同様の調査結果は中国でも明らかになっており、これにおいては同国の喫煙率が約28%であるのに対し、1000人の新型コロナウイルス感染症患者においては12.6%の人のみが喫煙者だったことが判明している。

 

さらにフランスでは全人口に対する喫煙率が約25.4%であるのに対し、新型コロナウイルス感染症に罹患してパリの複数の病院に入院した1万1000人の患者のうち、喫煙者は8.5%であったことも明らかになっているという。

 

フランスの神経生物学者Jean-Pierre Changeux氏はこのような結果が示された理由として、ニコチンが新型コロナウイルスの細胞への到達を阻止し、拡散を抑える可能性を指摘する。

 

それだけではなく同氏によると、ニコチンには最も重い症状を発症している新型コロナウイルス感染症患者にみられる、免疫系の過剰反応を軽減させる作用も備わっている可能性があるという。

 

需要の急増懸念、ニコチンパッチのオンライン上での販売禁止に

 

一方これらの研究結果を受け、フランス政府は24日既に動きを見せている。

 

なんと需要の急増に備え、ニコチンパッチやニコチン入りガムといったニコチンが含まれるタバコ代替品のインターネット上での販売を禁止するというのだ。

 

法案には“Covid-19に対するニコチンの保護作用の可能性に関するメディア報道により、薬局とインターネット販売におけるニコチン代替品は数日のうちに調剤の急増が起きる強い危険性がある”ことが綴られている。

 

販売禁止を行うことで需要と消費の急増を防ぎ、タバコ代替品が禁煙を目指す人の手に行き渡るようにすることが狙いのようだ。

 

※画像はイメージです(Pixabay)

 

人体に有害であるニコチンが新型コロナウイルスへの感染防止に効果を発揮するかもしれないという、今回明かされた驚きの研究結果。

 

ただ仮に新型コロナウイルスへの感染を妨げることが出来たとしても、ニコチンが有毒であることに変わりはなく、またタバコを吸っていながら罹患した際には命に関わる影響をもたらす。これについては更なる研究成果を待ちたいところだ。(了)

 

出典:The Guardian:French researchers to test nicotine patches on coronavirus patients(4/22)

出典:Business Insider:France has banned online sales of nicotine substitutes after a study showed smokers are less likely to be admitted for COVID-19(4/25)

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