大気汚染が、精子の遺伝子に影響を与える可能性

先日、イギリスで開催された学会で、大気汚染が精子の遺伝子に影響を与えている可能性を示す、研究結果が発表された。
遺伝子のオン・オフの切り替えに影響
7月7日にロンドンで開催された「欧州ヒト生殖・胎生学会(European Society of Human Reproduction and Embryology)」の年次総会で、大気汚染が男性の生殖能力に悪影響を及ぼす可能性についての研究結果が発表された。
その研究によれば、精子形成期に一般的な大気汚染物質に曝露された男性は、遺伝子のオン・オフの切り替えに影響を与える、精子の微妙なDNAの変化を示したという。
そしてオゾンと二酸化窒素が、いわゆる「エピジェネティック」の変化に最も強く関連する汚染物質として特定されたそうだ。
「エピジェネティック」とは遺伝子の働き方、または細胞分化のメカニズムのことで、遺伝子はオン・オフを切り替えることで、1つの細胞から筋肉細胞や神経細胞、皮膚細胞などさまざまな細胞に分化していく。
この研究を主導したアメリカ・マサチューセッツ大学アマースト校の疫学者、キャリー・ノーブルズ博士は、「今回の研究結果は、精子形成の重要な段階における大気汚染への曝露が、精子のDNAの変化と関連している可能性を示唆しています」と述べている。
遺伝子を制御するDNAメチル化
大気汚染が男性の生殖能力を低下させる可能性を示唆する証拠は増えているが、その生物学的メカニズムはこれまで不明のままだったという。
そして最新の研究では、遺伝子のオン・オフを制御する指標「DNAメチル化(DNA methylation)」が、影響を与えるメカニズムとして挙げられていたそうだ。
また特定された遺伝子の1つである「GNAS」は、以前から精液の質の低下や胎児の発育不良との関連が指摘されてきたという。
2000人以上の男性を対象に実施
今回の研究は、2013年から2017年にかけて、ユタ州ソルトレイクシティの2000人以上の男性を対象に行われたという。
被験者は登録時、そして2カ月後、4カ月後、6カ月後に精液サンプルを提供。研究者らは、各被験者がサンプル採取前の3カ月間(精子産生期に相当)に、オゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄、微粒子状物質などの大気汚染物質にどの程度曝露されていたかを推定した。
さらに研究者らは、6カ月後の追跡調査で、サンプルを提供した1220人の男性の精子の「DNAメチル化」を分析。その結果、大気汚染物質に関連する39に及ぶDNAの変化が特定され、オゾンと二酸化窒素が強い影響を与えていることが示唆されたという。
ノーブルズ博士は、次のように述べている。
「遺伝子発現の変化は、男性の生殖能力に影響を与える可能性があり、だからこそこの研究分野は重要なのです。大気汚染に関連した精子のDNAメチル化の変化と、生殖能力との直接的な関連性を明らかにするには、今後の研究が必要です」
イギリス・ノッティンガム大学の生殖生物学教授、リチャード・リー氏は、「これは、大気汚染物質が精子の質に悪影響を与えるという、増え続ける証拠に新たな知見を加える重要な研究です」と述べている。(了)
出典元:The Guardian:Air pollution linked to DNA changes in sperm, research shows(7/7)
























