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EUがハチに害を与える農薬の屋外使用を禁止、この決定に波紋が広がる

EUがハチに害を与える農薬の屋外使用を禁止、この決定に波紋が広がる
flickr_Axel Rouvin

ヨーロッパ連合では先週の金曜日に投票が行われ、ミツバチなどに悪影響を及ぼすとして、ある種の農薬を使用禁止とする法案が可決された。

 

4分3の作物の受粉を助ける

 

この農薬とは「ネオニコチノイド」と呼ばれる化合物をベースにして作られたもので、世界で最も広く使われている農薬とされている。

 

そもそもミツバチやその他の虫たちは、全ての穀物の4分の3の受粉を助けるため、世界的な食糧生産にとって重要な存在とされてきた。

 

しかしここ数年はミツバチなどの花粉媒介者の数が減少。その原因の一部は「ネオニコチノイド系農薬」の影響と考えられてきたそうだ。

 

そのためEUは2013年に花をつける作物に対する「ネオニコチノイド系農薬」の使用を禁止。しかし2月に欧州食品安全機関は、「ネオニコチノイド系農薬」を使用すると土壌や水が汚染されるため、屋外での使用によりミツバチや野生のハチの両方が高いリスクにさらされると発表した。

 

また最近の蜜のサンプルを使った研究でも、「ネオニコチノイド系農薬」による地球規模の汚染が明らかになったという。

 

これを受けEUは今回、「ネオニコチノイド系農薬」を屋外で使用禁止する法案を可決。この法律は2018年の末から施行され、その後「ネオニコチノイド系農薬」は密閉されたビニールハウスなどに限り、使用されることになるそうだ。

 

一般の人々からも広く支援を受ける

 

「ネオニコチノイド」から作られる主要な農薬の使用禁止は、広く一般の人々の支援を受けており、Avaazという団体が提起した嘆願書には、500万人が署名したとされている。AvaazのAntonia Staats氏は次のように語っている。

 

「私たちの政府は、ついに市民の言葉や科学的証拠に耳を傾けるようになりました。そしてこれらの化学物質とともにハチが生きていけないこと、またハチなくして私たちが生きていけないことを知っている農家らの声にも、耳を傾けているのです」

 

また農薬行動ネットワークのMartin Dermine氏も「今から半世紀前にネオニコチノイドを許可したことは、間違いでした。それは環境の災害をもたらしたのです。今日の(EUの)投票は、歴史的なものです」と賞賛している。

 

農家への影響は大きい?

 

しかしながら農薬の製造企業や、いくつかの農業団体などはEUを非難。EUが過度に注意喚起を行い、穀物生産量が落ち込んでいるという、一部の人々が否定した内容を広めたとして責めている。

 

ヨーロッパ作物防疫協会のGraeme Taylor氏も、次のように述べている。

 

「ヨーロッパの農業はこの決定によって、苦しめられるだろう。それは今ではなく、明日でもない。しかしそのうち、この決定を下した人々は、農家にとって重要なツールを取り除いたことによる明らかな影響を目の当たりにするだろう」

 

またイギリスの環境・食糧・農村地域省のスポークスマンも、今回のEUの決定を歓迎しつつ、次のようにコメントしている。

 

「私たちはこの禁止が農家に与える影響について認識しています。そのため私たちは代わりとなる手段を探るためにも、農家と協力していく作業を進めていくつもりです」

 

一方、サセックス大学のDave Goulson教授は「EUの農薬禁止は、証拠の重要性を考えれば論理的です」と語る。

 

「しかし病気や花のある生息域の不足も、ハチに害を与えているのです。またもしネオニコチノイドが単に他に似た合成物に置き換えられれば、私たちは同じ所を回り続けることになるでしょう。必要とされることは、真により持続可能な農業経営に向かって進むことです」(了)

 

 

出典元:The Guardian:EU agrees total ban on bee-harming pesticides(4/27)

出典元:The Telegraph:European countries ban ‘bee-harming’ pesticides(4/27)

参考:actbeyondtrust:ネオニコチノイドとは?

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