米ウ首脳会談、冒頭から激しい口論、語られた内容とは?
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2月28日、アメリカでは、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が行われたが、冒頭から激しい口論となった。
「外交」に疑問を呈したゼレンスキー大統領
28日、ゼレンスキー大統領はホワイトハウスに到着し、トランプ大統領と握手。大統領執務室に招かれ、鉱物資源を巡る協議を行う前、記者会見に臨んだ。
トランプ氏は会見の冒頭で、「ロシアのプーチン大統領とは、同盟関係にない。私は誰とも同盟していない。私はアメリカと良き世界のために同盟している」と述べ、一方に味方をしていては、ロシアのプーチン大統領とのタフな交渉で、合意は難しいとの見方を示した。
その後、J・D・バンス副大統領が言葉を引き継ぎ、次のように述べた。
「この4年間、アメリカの大統領(バイデン氏)は、記者会見でプーチン大統領に対し厳しい言葉を投げ、プーチンがウクライナを侵攻し、破壊したと主張してきた。しかし平和への道、繁栄への道は、恐らく外交によってもたらされる。(略)それが今、トランプ大統領がやろうとしていることだ」
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、バンス氏に「尋ねていいですか」と断り、「ロシアは私たちの大部分、東部やクリミアの領土を占領した。(略)そして今、トランプ大統領がそれを止めようとしている。しかしこれまで、状況は全く同じだった」と述べた。
またゼレンスキー氏、ミンスク合意について言及し、署名をしたが、ロシアがそれを破り、自国民を殺し、捕虜の交換もしなかったとし、「あなたのいう、外交とはどういうものなのか」と、バンス氏に疑問を投げかけた。
バンス氏が「敬意を払っていない」と批判
これに対し、バンス氏は、「私は、あなたの国の破壊を終わらせるための外交のことについて言っています」と述べ、口を挟もうとするゼレンスキー氏を制し、「(ゼレンスキー)大統領、敬意を払ってください。あなたが大統領執務室に入ってきて、アメリカのメディアを前にして審判を下すのは、敬意を払っていないと思います」と非難した。
さらにバンス氏は「あなたは前線で兵力不足の問題を抱え、徴兵を強制している。あなたは、(トランプ)大統領に感謝すべきだし、この紛争を終わらせようとすべきだ」と述べたという。
これに対し、ゼレンスキー氏は、バンス氏に「あなたはウクライナへ行ったこともないのに、どうして国内の問題が分かるのか?」と疑問を呈した。
バンス氏は「私は行ったことがあります。実際、(徴兵されていく)話を目にしました。そして実際に何が起きているのか、人々があなたのプロパガンダ・ツアーに動員されているのを知っています。あなたは、人々を軍に徴兵することに関して問題を抱えていることに、不同意なのですか?」と尋ね、さらに大統領執務室で、政権の批判を行うとは、敬意を払っていないと非難した。
ゼレンスキー氏は、バンス氏に対し「多くの問題がある。最初から(議論を)始めましょう。第一に、戦争の間、全ての人々が問題を抱えています。あなたもそうだ。しかし、あなた方には素晴らしい海があり、今は(戦争の脅威を)感じていない。しかし、将来感じることになるでしょう。神のご加護を」と話し、そこへトランプ氏が割り込んだ。
トランプ氏もゼレンスキー氏を非難
トランプ氏は、ゼレンスキー氏の言葉を制し、「我々が感じていることを、我々に話さないでほしい」と指摘。さらにトランプ氏は、次のように言葉を荒げ、まくしたてた。
「私たちは問題を解決しようとしている。我々が感じていることを、我々に指図しないでほしい。あなたは、我々がどう感じるか、決めつける立場にはない。あなたは非常に悪い立場に立たされている。あなたは今、我々に対して有利な立場にはない。君には、カードがない。あなたはカード・ゲームをしている。何百万人もの命を賭け、第三次世界大戦を賭けている。そしてあなたがしていることは、この国に対して非常に無礼だ」
ゼレンスキー氏は「私はカード・ゲームをしているわけではない。私は真剣です、大統領、私は真剣なんです」と答えた。
そこへバンス氏が口を挟み、ゼレンスキー氏に向かって「あなたはこの会談で、一度でも感謝の言葉を言いましたか?」と非難。ゼレンスキー氏は「何度も言っている。今夜も言った」と答えたが、バンス氏はそれを否定した。
さらにトランプ氏とゼレンスキー氏の会話は、次第にエスカレートしていった。(以下、トランプ氏を「T」、ゼレンスキー氏を「Z」、バンス氏を「V」と表記する)
T「あなたの国は、大きな問題を抱えている」
Z「分かっています。分かっています」
T「あなた(の国)は、勝てない。あなたは勝てない」
Z「私たちは戦争の当初から、力強く自国に留まっています。私たちは孤独でした。私たちは感謝しています。私は感謝していると言いました」
T「あなたたちは、馬鹿な大統領(バイデン氏)を通して、3500億ドルという支援を受け取った。我々はあなたたちに軍事装備を与えた。あなたの国の兵士たちは勇敢だが、あなたたちは、我々の兵器を使わなければならない。もし我々の兵器を使わなければ、この戦争は2週間で終わるだろう」
Z「私はそれをプーチンから聞きました、(戦争は)3日で終わるだろうと」
T「もっと短いかもしれない。はっきり言って、こういうビジネスをするのは、非常にハードなものになるだろう」
V「ただ、ありがとうと言えばいい」
Z「私は、アメリカ国民に、何度もありがとうと言った」
(略)
T「あなたは感謝をしなければならない。あなたにはカードがない。人々は死につつあり、兵士が不足し…。聞きなさい。非常に良い機会になるかもしれないのに、あなたは『私たちは停戦をしたくない、停戦をしたくない。これはいらない、これが欲しい』と言っている。もし今すぐに停戦が得られ、受け入れれば、弾丸が空を飛び交うのが止み、殺されることもないだろう」
Z「もちろんです。もちろんです。私たちは戦争を止めたい。しかし私は停戦の保証が欲しいと、あなたたちに言いました」
T「停戦を望んでいないというのか?私は停戦を望んでいる。なぜなら合意よりも、ずっと早く停戦が得られるからだ」
Z「私たちの国民に、停戦について尋ねてほしい。彼らがどう考えているかを」
T「それは私とではない。それはバイデンという名前の男との話だ。彼は賢い人間ではなかった」
Z「(いえ)これは大統領、あなたとことです。あなたとの話です」
T「失礼、それはオバマとの話だ。彼があなたたちにシート(不明、ミンスク合意の席のことか?)を与えた。私はあなたにジャベリン(携行型ミサイル)を与えた。私がジャベリンを与え、あの戦車を全部破壊できるようにした。(略)あなたは私にもっと感謝をしなければならない。なぜなら私に言わせれば、あなたにはカードがないからだ。私たちがいれば、あなたはカードを持てる。しかし私たちがいなければ、どんなカードも持てない」
「ロシアは私を尊敬している」
その後、トランプ氏は記者からの「ロシアが停戦を破ったらどうなるか」との質問に対し、「分からない」としながらも、次のように答えた。
「彼ら(ロシア)は、バイデンを尊敬していなかったので、バイデンとのそれ(約束)を破った。彼らはオバマも尊敬していなかった。彼らは私を尊敬している。私に言わせれば、プーチンは私と共に、本当に大変な思いを経験した。彼は偽りの魔女狩りを経験した。私が言えるのはこれだけだ」
そして最後にトランプ氏は、ゼレンスキー氏に対して、次のように述べた。
「問題は、私があなたにタフガイになる権限を与えたことであり、アメリカなしではあなたはタフガイにはなれないと思う。あなたの国民は非常に勇敢だ。しかし、あなたが取引をするか、私たちが抜け出すかのどちらかだ。そして私たちが抜け出したら、あなたは戦うだろう。素晴らしい結果にはならないと思うが、あなたは戦うだろう。しかしあなたにはカードがない。しかし取引にサインすれば、あなたはずっと良い立場になる。しかしあなたは、まったく感謝の気持ちを示していない。正直言えば、それはいいことではない」
その後、記者会見が終わり、会談に移ったが、結局鉱物資源の交渉も物別れに終わり、ゼレンスキー大統領はホワイトハウスを後にした。(了)
出典元:AP:What they said: Trump, Zelenskyy and Vance’s heated argument in the Oval Office(2/28)