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アラスカで発見された少女の遺伝解析から新たな古代人の集団が判明、北米移住に新説

アラスカで発見された少女の遺伝解析から新たな古代人の集団が判明、北米移住に新説
UAF Eric S. Carlson

アラスカ内陸部にある、氷河期時代の遺跡で発見された生後6週間の幼児。そのDNA解析を行った結果、北アメリカにこれまで知られていなかった集団が存在していた可能性が明らかとなった。

 

遺伝解析から新たなグループが判明

 

この発見については科学誌「Nature」において1月3日に発表されたが、その中で研究者らは新しい集団を「古代ベーリング地峡人」と名付け、人類が北アメリカへどのようにたどり着いたのかに関して、従来の理論とは大きく異なった姿を示しているという。

 

この研究論文の主筆の1人である、アラスカ大学Fairbanks校の生物考古学者であるBen Potter教授は、次のように語っている。

 

「私たちはこのグループが存在しているとは知りませんでした。これらのデータは最初発見されたネイティブ・アメリカンのグループに関する、直接的な証拠を提供するものです。さらにこのデータは、これらの初期のグループがどのように北アメリカに移住し、定住していったのかに関し、新たな光を当てるものです」

 

東アジアから渡来後、2つに分かれる

 

研究者らは以前、解析と人口統計モデルを使い、グループの人々とのつながりを、何度にも渡り描き続けてきたという。

 

その結果、唯一発見されている古代ネイティブ・アメリカンの集団が、約3万5000年前に東アジア人から分かれたことが判明。

 

さらにその集団は約2万年前に「古代ベーリング地峡人」と、他の全てのネイティブ・アメリカンの祖先の2つのグループに分割したそうだ。

 

この遺伝解析は論文主筆のJ. Victor Moreno-Mayar氏とEske Willerslev氏、さらにデンマークにあるコペンハーゲン大学自然歴史博物館にあるGeoGeneticsセンターのチームによって行われた。

UAF

遺跡から発見された少女は2人いた

 

遺跡で発見された幼児は、地元の先住民によって「Xach’itee’aanenh T’eede Gaay(日出ずる少女)」と名付けられたが、そのDNAは彼女が属するグループの歴史に前例のない扉を開くことになったという。

 

また「Xach’itee’aanenh T’eede Gaay」は2013年にUpward Sun Riverという場所で発見されたのだが、そばには彼女よりも年下の「Yełkaanenh T’eede Gaay(夕暮れの少女)」と名付けられた少女の遺骨も見つかったそうだ。

 

そして2人は約1万1500年前(氷河期)にその地に住んでいたと考えられ、近い親類で、いとこだった可能性があるとか。Potter教授は次のように語っている。

 

「古代の人々がどのようにアメリカへ定住するようになったのかを理解するにおいて、新たに明らかにされた人々の重要性を誇張するのは難しいかもしれません。この新しい情報は私たちに先史時代のネイティブ・アメリカンのより正確な姿を思い描くことを許容してくれます。それは私たちが考えていたよりも、驚くほど複雑なのです」

 

北米への移住について2つのシナリオ

 

またこの発見は「新世界」へ移住するのに、2つのシナリオがあったことを示唆しているという。

 

1つは約1万5700年前よりも以前に、ベーリング地峡を越えてきた人々の間には、明らかに異なった2つのグループが存在していたという説。

 

もう1つは地峡を越えてきた人々は1つのグループだったが、その後ベーリング地峡において古代ベーリング地峡人と、ネイティブ・アメリカンの2つのグループに分かれたという説で、後者はその後、1万5700年前に氷床に覆われた地域の南へ移動していったと考えられているそうだ。

 

古代ベーリング地峡人は北方に留まる

 

Potter教授らのUpward Sun River遺跡における調査は約10年に及んでおり、当初分析を始めた時、研究者らはそれらのデータが北部のネイティブ・アメリカンの遺伝情報と一致すると考えていたという。

 

しかし情報が一致するどころか、結果的に誰にも知られていなかった古代の人々のグループに適合したとされている。

 

そしてこのことが示唆するのは、古代ベーリング地峡人が数千年間極北に留まっていたということ。一方、ネイティブ・アメリカンの祖先たちは、北アメリカの残りの地域を通って南へ広がっていったことだという。

 

さらにDNAの結果と他の考古学的データから、アタバスカ語族(ネイティブ・アメリカン)の祖先が恐らく6000年前に再び北へ移動し、結果的に古代ベーリング地峡人を吸収もしくは退去させ、祖先の地において深く根を張り、定着したと考えられるそうだ。Potter教授は次のように語っている。

 

「アラスカにいる現代のアタバスカ語族の人々については、非常に限られた遺伝情報しかありません。今回のこれらの発見はアラスカの原住民にとって、北米のネイティブ・アメリカンと古代ベーリング地峡人の両方のつながりについての新しい知識を得るための機会を作り出しているのです」(了)

 

 

出典元:UAF:Research reveals evidence of new population of ancient Native Americans(1/3)

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