ウサマ・ビンラディン容疑者といえばテロ組織アルカイダの指導者であり、2001年に発生した米国同時多発テロをはじめとする数々のテロ事件の首謀者で知られるが、2011年に米国が行った軍事作戦により死亡したとみられている。

 

しかしそんなウサマ・ビンラディン容疑者の息子とされるハムザ・ビンラディン容疑者が、今アルカイダで指導者としての頭角を現し始めているという。

 

父親殺害の報復として聖戦呼びかけ、懸賞金も

 

米国務省によると、ウサマ・ビンラディン容疑者が身を隠していたパキスタンの隠れ家において押収された物品は、ウサマ容疑者がハムザ容疑者を自らに代わるアルカイダの指導者として教育していたことを示すものであったという。

 

ハムザ容疑者は近年インターネット上で支持者らに向けてオーディオやビデオによるメッセージを発信しており、ウサマ容疑者を殺害した報復として、米国やその同盟国を攻撃するように呼び掛けてきたそうだ。

 

米国務省は、ハムザ容疑者に関する情報には最大100万ドル（約1億1000万円）の懸賞金を支払うとしている。

 

またこのニュースに対しては、ハムザ容疑者の出身国であるサウジアラビアも反応。ハムザ容疑者の国籍をはく奪したとしている。

 

ハムザ容疑者はサウジアラビアの国民に対しても昨年3月、同国の王家に対する“聖戦”を行う準備をするよう呼び掛けている。

 

WANTED. Up to $1 million for information on Hamza bin Laden, an emerging al-Qa'ida leader. Hamza is son of Usama bin Laden and has threatened attacks against the United States and allies. Relocation possible. Submit a tip, get paid. https://t.co/LtBVhsrwTc #RFJ pic.twitter.com/gmx5hkoSzQ

— Rewards for Justice (@Rewards4Justice) February 28, 2019

ハムザ容疑者の居所を巡る情報は錯綜

 

しかしハムザ容疑者とは一体どんな人物なのだろうか。

 

ハムザ容疑者は推定年齢30～33歳と考えられており、米国同時多発テロの実行犯とされるモハメド・アタ容疑者の娘を妻としているとみられている。

 

またハムザ容疑者はウサマ容疑者の一番のお気に入りの息子であったと考えられており、2年前テロリストとして米国から正式に認定されている。

 

The United States is hunting for Hamza bin Laden who is the son of former al Qaeda leader Osama bin Laden, and a reward of $ 1 million (about 3.7 billion Ugandan shilling) has been put for anyone who can provide America with Hamza’s whereabouts. pic.twitter.com/BA1pQk4fjN

— @AaronAinomugisha (@AaronAinomugis3) March 1, 2019

 

一方、ハムザ容疑者の居所に関しては情報が錯綜。

 

ここ数年は自らの結婚式を行った地であるイランで母親と共に暮らしているといったものから、パキスタンやアフガニスタン、シリアにいるとするものまで、報告書ごとにその情報は様々だ。

 

しかしハムザ容疑者の居場所について米国務省外交安全局の次官補Michael Evanoff氏は、“我々はハムザ容疑者がおそらくパキスタンとアフガニスタンの国境沿いにおり、イラン側へ渡ろうとしていると考えている。しかしそうは言っても、容疑者は中南アジアなどどんなところにでもいる可能性がある”とコメント。

 

はっきりとした居場所は掴めていないようだ。

 

衰退しても脅威が去ったわけではない

 

一方米国政府が恐れるのは、ハムザ容疑者がアルカイダを復興へと導くカリスマ的指導者となることだ。

 

2011年にウサマ容疑者が米国の軍事作戦により死亡して以来、アルカイダの勢力は衰退化し、代わってイスラム国（IS）が台頭。

 

その後、名目的なアルカイダの指導者となったアイマン・ザワヒリ容疑者は、医師の経歴を持つ学者タイプの人物で、アルカイダの活性化には失敗している。

 

 

しかしアルカイダの脅威がこれで去ったわけではない。

 

アルカイダは近年、目立たないよう組織の再建や再編を進め、欧米やその同盟関係にある中東やアフリカの国家を攻撃する計画を立てている。

 

尚アルカイダはライバル関係にあるISについて、ISの指導者が預言者ムハンマドの後継者でありイスラム教徒にとっての最高指導者である“カリフ”を称したことは、間違いであったと指摘。その結果、米国率いる有志連合に攻撃される結果になったと常に批判してきた。

 

国務省でテロ対策等に携わるNathan Sales氏は、近年のアルカイダについて「この期間（ISの台頭してきた間）におけるアルカイダの活動は比較的静かなものであるが、それは戦略的な休止状態であり、降伏したわけではない」としている。

 

故ウサマ・ビンラディン容疑者の息子、ハムザ容疑者がアルカイダ指導者としての頭角を現しつつあるという今回のニュース。ISが勢力を衰退させる中、その台頭以前に欧米とその同盟諸国を脅威に晒してきたアルカイダが復興しつつあるとは、なんとも皮肉なことだ。（了）

 

 

出典：BBC News：Bin Laden: US offers reward for Osama’s son Hamza（3/1）

出典：CNN：Osama bin Laden’s son is taking over as al Qaeda leader, US says（3/2）